【イベントレポート】“見えない外壁リスク”に挑む新技術——株式会社ジェブ『剥落防止くん』記者発表会

2025年6月24日(火)東京都港区赤坂にて開催された、株式会社ジェブ(神奈川県横浜市に本社を構える住宅メンテナンス事業を展開)主催の記者発表会に、防災もしも編集者として参加。マンション外壁タイルの落下事故を未然に防ぐ新サービス『剥落防止くん』を発表した。本レポートでは、「外壁タイルの剥落から命を守る」という強いメッセージのもと開催された記者発表会の模様を振り返る。

目次

老朽化マンションの増加と「剥落リスク」の現実

全国各地で進行するマンションの高経年化は、もはや社会全体の課題と言えます。国土交通省のデータによると、築40年以上のマンションは2023年末時点で約136万戸に達し、今後20年間で3倍の約436万戸に達する見込みだ。こうした中で懸念されているのが、外壁タイルの剥落事故である。

外壁タイル浮きのイメージ

とくに1980年代のバブル期に大量供給された建物に多く見られるタイル貼りの外壁は、年月とともに接着力が弱まり、地震や風雨の影響で剥落するケースが増えている。実際、国交省の調査では築10年以上の建物の8.3%が外壁剥落の危険性を抱えているという報告もあるそう。

「実際に命を落とす事故も発生している。この問題を見過ごすことはできない」と話すのは、株式会社ジェブ 代表取締役 太田猛也氏。こうした社会課題に応えるべく生まれたのが、新サービス『剥落防止くん』である。

『剥落防止くん』の最大の特長は、ドローンによる赤外線診断と、透明コーティングによる剥落防止処理を一気通貫で提供できる点にある。

赤外線カメラを搭載した高性能ドローン

これまでの外壁点検は、足場を組んで人の手による打診検査を行う必要があり、多大な手間とコストがかかっていた。ジェブが導入した高性能ドローン(EP-InspectDrone)は、赤外線カメラを用いた非接触調査を可能にし、足場不要・短期間での診断を実現。通常、足場の設置に10日〜1ヶ月かかるところを、わずか1日で調査から報告書作成まで対応可能だという。

高精度診断により、外壁タイルの浮きを可視化した際のイメージ図

そしてもう一つの柱となるのが、透明な塗膜によるコーティング技術「KFタイルホールド工法」だ。タイル表面に美観を損なわない透明塗料を塗布し、浮きや劣化のある箇所を補強することで、剥落を防ぐ。10年保証付きで、震度5強の地震にも耐えた実績を持つ。すでに700件以上の施工実績を誇り、その信頼性の高さも評価されている。

技術力と社会性の融合——トークセッションから見えた可能性

当日の記者発表会では、開発に関わった企業・有識者によるトークセッションも行われた。登壇者には、コーティング技術を提供するKFケミカルの大川氏、「KFタイルホールド工法」を設計したPLジャパンの松川氏、さらに元内閣府地方創生推進室長の市川氏も名を連ね、業界内外からの期待の大きさがうかがえた。

松川氏は「“剥落防止くん”という親しみやすいネーミングに加え、ワンストップ対応ができる点が大きな強み。工期も従来の半分以下に短縮できる」と語り、大川氏は「美観と性能を両立した三分艶仕上げ、白濁しにくい独自処方を採用しており、公共施設や高速道路でも実績がある」と述べた。

また市川氏は、「管理組合が合意形成に苦労する中で、調査から補修まで一社で対応できるのは極めて意義がある。マンションに限らず、学校や庁舎などの公共建築物にも応用が期待できる」と強調した。

“守る”だけでなく“魅せる”技術へ——美観×安心の両立

外壁タイルの剥落防止と聞くと、安全性や耐久性ばかりが注目されがちだが、『剥落防止くん』では美観維持も重要視されている。コーティングは透明塗膜であり、既存のタイルのデザインや色味を損なわず、むしろ艶を与えることで建物の印象を向上させるという。

太田社長は「私たちのコーティングは“守る技術”であると同時に、“魅せる技術”でもあります」と語る。防災の観点からの重要性はもちろん、建物資産価値の維持・向上にも貢献する新しい保全スタイルとしての地位確立を目指す。

安全・効率・環境への挑戦——新たなスタンダード創出へ

サービスの提供開始にあたり、同社では“外壁調査無料”という大胆な方針も打ち出した。これは、コーティング施工を前提とする場合に限られるが、導入障壁を下げることでより多くの建物管理者に活用してもらう狙いがある。

加えて、再塗装や張替えが不要となることで資材ロスを減らし、SDGsへの貢献も目指している。ドローン技術の活用によって高所作業の安全性向上にも寄与し、“人にも環境にも優しい”ソリューションとしての側面も強調された。

左から、「株式会社ジェブ代表 太田様」「PLジャパン株式会社代表 松川様」「前内閣府地方創生推進事務局長 市川様」「KFケミカル株式会社 建築塗料事業部 大川様」

編集後記:防災の新常識へ——「備え」の再定義

外壁の剥落は、「ある日突然」の事故として人命を脅かす。しかしその“前兆”は確実に存在し、『剥落防止くん』はその兆候を“見える化”し、対応可能にする仕組みだ。従来の点検手法に比べ、調査・施工・保証までを一社で担うスムーズさは、防災の現場にも革新をもたらす。

今回のイベントは、単なる製品発表ではなく、防災意識や建築保全の在り方そのものを問い直す機会であったように思う。「命を守る技術」に触れた今、私たちもまた「住まいの安全」という足元の備えを再確認する時期に来ているのかもしれない。

※株式会社ジェブ様 公式サイト:https://www.jeb.bz/
※『剥落防止くん』サービス詳細サイト:https://epmcoat.jp/eptcoat/

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